ご挨拶
ご挨拶
この度、名古屋大学において、嚢胞性線維症に関する国際シンポジウム「アジアにおける嚢
胞性線維症−基礎から臨床へ−」“Cystic fibrosis in Asia from basics to clinics”を開催する
ことになりました。難病医学研究財団主催の国際シンポジウム事業として実施するものです。
実行委員会を代表して、ご挨拶申し上げます。
嚢胞性線維症(cystic fibrosis)は、粘膜上皮細胞のアニオンチャネルであるCFTRの機能不
全を原因とし、繰り返す肺炎、膵液の分泌不全による栄養不良、胎便性イレウス、男性不妊
など多臓器の障害をきたす難病です。欧米に多く、日本を含むアジアでは稀な疾患であっ
て、主治医となった医師が参考にできる情報が、最近まで国内にほとんどありませんでした。
難治性膵疾患に関する調査研究班は、疫学調査を実施して国内の受療状況を把握すると
ともに、遺伝子診断と機能診断(汗試験)の体制を整え、主治医と研究者で構成されるグル
ープ内で診療に関する情報を共有する嚢胞性線維症登録制度を立ち上げました。また、家
族会をはじめとする各方面の方々のご尽力により、嚢胞性線維症の基本薬(ドルナーゼアル
ファ、トブラマイシン吸入薬、高力価脂肪分解酵素)が、国内で使えるようになりました。
このように、現在わが国では、嚢胞性線維症の診療体制が整いつつあり、嚢胞性線維症と
CFTRに関する長い研究の歴史を持つ欧米から専門家を招いて診療と研究の方向性に関
する意見交換を行うのに良いタイミングと考えて、この国際シンポジウムを企画しました。トピ
ックスとしては、アジアにおける嚢胞性線維症の疫学と病態、嚢胞性線維症の栄養状態の
評価と栄養管理、アジア型CFTR遺伝子変異の特徴と変異CFTRの生物学、CFTRの発現
調節、アジアにおけるCFTR関連疾患、を選びました。
講演を依頼した海外の研究者のほとんどから快諾が得られ、基礎研究から最新の治療、個
別化医療、チーム医療、栄養管理、理学療法まで幅広い内容となっています。また、国内か
らは多くの主治医による症例報告のポスター発表が予定されており、充実したプログラムに
なっていると思います。嚢胞性線維症の診療と研究にたずさわる多くの皆様のご参加をお
待ちしております。
実行委員長 下瀬川 徹
(東北大学大学院医学系研究科消化器病態学)
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