認知機能と認知症のお話し

 高速道路の逆走や過酷な介護労働など、「
認知症」は深刻な社会問題になっています。認知症対策は国家戦略
(新オレンジプラン)として位置づけられています。認知症にならないために、
「認知症」とは何か、また、
認知症の予防法」について、我々は知っておく必要があります。

1)認知と認知機能

 そもそも、
認知とは何でしょうか? Wikipediaによると、「人間などが外界にある対象を知覚した上で、
それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のこと。」と書かれています。
 一方、
認知機能とは「ものごとや外界を正しく理解し、適切に実行するための機能」のことを指し、具体的には、
「記憶・判断・計算・理解・学習・思考・言語及び実行機能(行動制御)等を含む、脳の高次の機能」
のことを言います。

2)加齢と認知機能
 脳は20歳台をピークにだんだん
委縮していきます。50歳あたりから徐々に認知機能が低下すると言われています。
60歳台で委縮が顕著(5〜10%減)になり、80歳台で10〜20%も委縮します。委縮は神経細胞数の減少が原因と
考えられます。そうなると、脳での情報処理能力が低下するとともに、記憶が呼び出せない「物忘れ」が多く
なります。これが認知症の始まりです。ひどくなると、料理を食べたことなどエピソードを忘れる
記憶障害
簡単な計算ができなくなる
計算力障害、被害妄想など情緒が不安定になる感情障害、徘徊など意味不明の行動を
起こす
異常行動など、典型的な認知症の症状が顕著になってきます。

3)認知症とは
 このように、
認知症とは、老化に伴う病気の一つで、脳の細胞の死滅や機能低下よって、記憶・判断力など
認知機能に障害が起こり、社会生活や対人関係に支障が出ている状態のことを言います。
 65歳以上の高齢者の約15%(460万人)が、認知症にかかっているとされており、さらに、認知症の一歩手前の

軽度認知障害
(Mild Cognitive Impairment; MCI)の人は約400万人いると推定されています。実に65歳以上の4人
に1人が認知症とその予備軍となります。
認知症のタイプは大きく3つに分けられます。
・アルツハイマー型認知症:βアミロイドというタンパク質が脳に蓄積し、脳(特に記憶を司る海馬)がだんだん萎縮
 していくもので、もの忘れがひどくなります。もの盗られ妄想や徘徊も起こします。全認知症患者の50〜60%を
 占め、女性に多いとされています。
・脳血管性認知症:脳梗塞や脳出血など、脳の血管障害によって、血液が行かなくなった部位の脳が委縮して起こります。
 症状も部位によって異なり、例えば、まだら記憶がみられたり、しびれ・麻痺があったり、感情のコントロールが
 きかない、などの症状が見られます。全体の2割程度を占め、男性に多いと言われています。
・レビー小体型認知症は、レビー小体というタンパク質が脳に蓄積することで起こります。認知機能の調子が変動しな
 がら低下していき、幻視や細かい体の震えも起こります。はっきりした脳の萎縮は見られないことが多いようです。
 全体の10〜15%程度で、男性にやや多いと言われています。

診断や治療法は、医療関係のホームページをご覧ください。

4)認知症の予防法
 認知症予防には以下の方法が挙げられています。基本は脳の活性化と生活習慣病予防です。
 ・
知的な行動習慣:ゲーム、読み書き、計算等(脳トレ)で、頭を働かせる=脳の活性化
 ・積極的な
対人接触(人と交わる):脳の活性化
 ・バランスのよい
食事と抗酸化物質の摂取(青魚、ビタミン、ポリフェノール等): 生活習慣病予防
 ・適度な
睡眠:6〜8時間の睡眠時間、30分以内の昼寝、夜更かししない
 ・適度な
運動習慣:生活習慣病予防、脳の活性化

 運動は、生活習慣病の予防に高い効果があることはご存知と思いますが、運動が認知機能の改善にも役立つ
となると、一石二鳥です。運動と認知機能の関係については、次の「運動と認知機能」で詳しく説明します。

研究のページにもどる


トップページにもどる