運動と認知の二重課題に関する研究
(科学研究費・基盤研究(C),2017-2019年)

1.研究の背景
 
運動中に認知課題を遂行する二重課題のトレーニングは,認知症予防・改善に効果があるとのエビデンスが蓄積されています.
一方,トレーニングではなく,運動中に一過性に認知課題を実施すると,運動中または運動後に認知パフォーマンスが向上するかしないか,はっきりしていません.これは
用いる運動課題,認知課題が研究によって異なることが一つの要因と考えられます.すなわち,認知課題の種類や難易度,または運動課題の種類や難易度が変われば,それぞれのパフォーマンスに対する影響は異なることが推察されます.しかし,それぞれの課題条件を変化させた場合,それぞれの課題のパフォーマンスがどのように変化するかについて,総合的に検討した研究は見当たりません.

 また,中高年以降になると,生活習慣病の中の脳血管疾患や虚血性心疾患も問題視されます.これらを予防するのに,20分以上の中強度までの持久的運動が推奨されています.もし,中程度の運動を20〜30分ほど持続的に実施している時に,インターバル的に認知課題をするような二重課題トレーニング法が確立できれば,心血管系の生活習慣病と認知症を同時に予防でき,一石二鳥です.
そのためには,
運動条件や認知課題条件を変えた時の二重課題中の呼吸循環応答を検討する必要があります.しかしながら,二重課題中の呼吸循環応答を明らかにした研究はほとんどありません.

 さらに,これらについて,
加齢による影響を検討した研究はほとんどありません.

 一方,運動開始時に呼吸循環系のパラメーター(換気量や心拍数)が急増しますが,このメカニズムにはこれまでの運動経験などを元に認知機能が働いて起こるという仮説(
学習-記憶仮説)があります.今回の実験系で,安静から運動と認知の二重課題を同時にスタートした時と,個別にスタートした時の呼吸循環応答を比較することにより,この仮説を証明できできるかもしれません.


2.研究の目的
本研究では,
@運動課題変化実験:異なる回転数(速度)に合わせて自転車を漕ぐ,という異なる運動課題中に認知課題を実施した時に,それぞれの課題のパフォーマンスがどのように変化するか,また,その時の呼吸循環応答がどうなるか,さらにそれらが若年者と高齢者でどのように違うかを明らかにする,
A認知課題変化実験:一定回転数で自転車を漕いでいる時に,認知課題の種類と難易度を変えた場合,それぞれの課題のパフォーマンスがどのように変化するか,また,その時の呼吸循環応答がどうなるか,さらにそれらが若年者と高齢者でどのように違うかを明らかにする,
B課題開始時の呼吸循環応答の実験:安静状態から運動のみ,認知課題のみ,二重課題を開始した時の,立ち上がりから定常に至る3分間の呼吸循環応答と運動および認知パフォーマンスの経時的変化を明らかにするとともに,年齢による応答の違いを明らかにする,ことを目的とする.


これらを通して,運動中の認知課題遂行における認知・運動・呼吸循環機能の相互関連性について,加齢による影響を含めた様々な観点から総合的に解明するのが,本研究の目的です.
それぞれ,リンク先のページで詳しく解説します.


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